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新しい「台日ロープ」をつくるとき

―故・李登輝元総統の心を継ごう-

一般社団法人  台湾友の会

顧問  江口克彦

台湾国と日本国は、「民主・自由・人権」という価値観を共有している。また、歴史的に見ても、両国は、是非は別として、半世紀の間、一体となった歴史がある。それゆえに、日本国民の多くは台湾国民を最も信頼できる国民として好意を持ち、台湾国民の多くも日本国民に好意を寄せている。両国は、いわば、地政学的にも、「運命共同体」、すなわち、「台湾国なくして日本国はなく、日本国なくして台湾国はない」という不離一体の関係にある。

今日このような状況を創り出す極めて重要な役割を果たしたのが、先日逝去された李登輝台湾国元総統であることは、台日両国、並びに両国民が等しく認めるところだろう。

李登輝元総統は、二十世紀後半のあらゆる国家の最高指導者たちのなかでも抜きんでて優れた人物であった。それまで38年間続いた言論の統制、自由の制限の台湾国を、言論の自由を認め、民主選挙によって、大統領を国民自らが選ぶ権利を国民に持たしめた。普通、この過程は、内乱か、流血の革命になるものだが、李登輝という哲人総統は、これを「無血革命」、「静かなる革命」で成し遂げている。まさに、他の世界中の国の最高指導者のなかでも、最高、かつ偉大な指導者であったと言える。このような総統を戴いた台湾国民は幸せであったと思う。

李登輝元総統は、日本に近しい総統、日本びいきの総統と言われていた。事実、日本精神を讃え、また武士道精神の真髄を説き続けた。だが、一方で、李登輝元総統が日本国に厳しい諫言をしていたことは、あまり両国民に知られていない。たとえば、「日本は、米国依存と中国への精神的隷属から抜け出すべきだ」、「Gゼロの時代に、日本がもっと積極的に、世界の先頭に立つべきではないか」など、折々に話し、また、日本国の安倍晋三総理にも、直接、進言している。単なる日本びいきではなかった。

台湾国と日本国は、幾つものロープでつながっている。しかし、その「台日ロープ」のなかでも、ひときわ太いロープは、「李登輝ロープ」であった。台日両国民は、ほとんどなにも考えず、相思相愛だと思い込んできたし、それでよかった。しかし、その太い「李登輝ロープ」は、消え去った今、果たして、両国民は、「なにも考えなくていい状態」なのかと自問する必要がある。

今こそ、両国民は、両国の関係強化のために、一層の努力をしなければならない。両国民は、両国同士、両国民同士が、さらに緊密な関係をつくり上げていく努力をしなければならないと思う。

幸いにして、謝長廷大使が、今、懸命に、日全国各地を駆け巡り、草の根活動を展開し、日本国民一人ひとりと強固な紐帯を結んでいる。かくの如くに、謝長廷大使が、「李登輝ロープ」に替わる、「台日の太いロープづくり」を試みているのは、実に心強いことである。今、私は、謝長廷大使の活動に協力することが、故・李登輝総統への恩返しと思っている。

34年間の李登輝元総統とのお付き合いだった。毅然とした姿、敢然と行動する力、優しい笑顔を、私は忘れない。